レッツノートは本当に頑丈で品質試験が厳しいのか?
はじめに
勝間和代さんがブログでレッツノートSZ6に感動されてるので気になり調べたら、訳あって最後はアメリカ国防総省のデータベースにまでアクセスすることになりました。
なぜアメリカ国防総省のデータベースを見ることになったかは後半で説明しますが、レッツノートについて正直な感想を言うと、旧レッツノートの悪かった点が改善され、やっとまともに使えるようになっただけなのかな、と思いました。
なお勝間和代さん及びレッツノートファンに誤解がないように言っておきますが「レッツノートCF-SZ6PDYQRはいいパソコンです」とおっしゃている記事を否定するつもりは全くありません。
物を大事に注意して使われる方は問題ないと思いますが、おっちょこちょいの方やノートパソコンを乱暴に取り扱われる方は、高い買い物だったと後で後悔するかも知れません。
今回Panasonicの広告方法が自画自賛しすぎて不適切な印象を感じたので、一般の消費者が気付きずらい点にフォーカスし、どこがガチでヤバいのか記事にまとめてみました。
(注)この記事は2017年12月にはてなブログで公開したものです。
レッツノートの使用上の注意点
注意点はたった1つです。
「落としたら壊れるので大事に使ってね。」です。
Panasonicのサイトを見た方は「えっ!嘘。頑丈と宣伝してるじゃん。」と思われるかも知れませんが本当です。
誇大広告?
頑丈
ケースなしでも、安心して持ち運べる。
という宣伝文句ですが、内容をよく見ると誇大広告なのではと思いました。
また、落下試験の高さは業務用机の平均高さを算出し76cmという落下の基準を設けたとありますが、違うと思います。
そもそも高さ76cmのテーブルってどこで売っているのでしょうか。Panasonicが特注で導入しているのでしょうかね。
ちなみにJIS規格では70cmが基準となっていて、日本オフィス家具協会が推奨しているのは72cmです。
落下基準の高さ76cmはアメリカ国防総省が制定したMIL-STD-810の基準だと思われます。
まずこの2つの動画を見て下さい。
(注)レッツノートSZの落下試験動画は削除されたので、CF-XZの落下試験動画を貼っておきます。この動画もそのうち削除されるかも知れないので、スクショを貼っておきます。
ノートパソコンが水平に落下して床に叩きつけられますが正常に動いてます。
ほとんどのユーザは「机から落としても壊れないから凄いじゃん!」と思われたかもしれませんが、どこが広大公告なのでしょうか?
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わかりませんか?
それでは答を言います。
あのような落下は机が突然空中に消えない限り、まずありえません。
「でも、あんなありえない落ち方をしているのに壊れないのだから凄いじゃないの?」と思われるかも知れませんが、実は落下試験は面落下が一番衝撃が少ないのです。
落下試験は、面<辺<角の順に条件が厳しいのです。本体にかかる衝撃力は同じでも、角1点で衝撃を受けた場合、角部が壊れるのは容易に想像できると思います。
「でも、CF-XZは6面落下の試験でも壊れてないじゃん?」と思われるかも知れません。
実はこの試験は一部条件を変えハードルを下げてます。どこが変わっているのでしょうか。
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答:底面以外の落下はタブレットモードで実施してます。
CF-XZのタブレットモードはキーボードが無いので、重量が約半分になります。
落下の衝撃力は重量に比例するので、タブレットモードだと落下の衝撃力は約半分に減るのです。
後継機種のRZは液晶は分離できず、液晶を360°回転させるとタブレットモードになるのですが、この動画をRZだと勘違いするユーザもいるのではないでしょうか。
「でも、30cmの26方向でも壊れてないから凄いじゃん?」と思われるかも知れません。
落下の衝撃力は高さに比例するので、高さ30cmは高さ76㎝からの落下に対して6割以上衝撃は減ります。
これら落下試験で疑問に思ったことがあります。
開発者インタビューで「鞄にPCをいれたままポンと机においたりする状況を考えた、26方向から落とす30cm落下試験を行っています」と説明がありました。
宣伝では「ケースなしでも、安心して持ち運べる。」と謳っているので少し矛盾している気がします。
レッツノートって、鞄にいれたままポンと机におくと壊れるほど、相当ヤバかったんですかねー。
また、世界中探しても30cm落下試験で壊れないと宣伝しているノートPCはPanasonicしかなく、競合の開発メーカからは失笑されているのではと思います。
もし私が開発部長だったら、こんな恥ずかしい試験動画は絶対公開しないですね。
最後にPnasonicのこれらの落下試験は、通常の試験よりも、もう1つハードルを下げてました。
それは何でしょう?
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答:落下面の床です。
ノートパソコンを落としている落下面の床は2インチ(5cm)の合板(ラワン材)なのです。
Panasonicはアメリカ国防総省が制定したMIL-STD-810
516.5規格に準拠しているといってますが本当でしょうか。(現在はこの文言と動画は削除されてます)
それでは調べてみましょう。
アメリカ国防総省のデータベースにアクセスして検索したところ、MIL-STD-810は2008年にRevision Gに改定され、2014年に一部改訂されRevision G Change 1 (change incorporated)が最新となってました。
ASSIST-QuickSearch Document Details
最新版は1086ページに増えてましたが、579ページ目の4.6.5 Transit Drop (Procedure IV).に落下試験の条件・方法の詳細が記載されてます。
ここを読んでみると「The default drop surface is steel backed by concrete.」デフォルトの落下面はコンクリートで裏打ちされたスチール(鉄板)となってました。
しかし、Panasonicは2008年の規格Revision Gの条件:落下面は2インチの合板でテストしているのです。
スチール(鉄板)は落下の衝撃を吸収しませんが、5cmの厚みの合板(ラワン材)は金属より柔らかいので、合板の表面が割れ衝撃は若干吸収されるのです。
Panasonicは嘘は言ってないのですが「厳しい品質基準を繰り返し実施」と大きなことを言っているのだから、落下面はスチールでクリアーすべきだと思います。
これが2018年に営業利益4500億円を目指している大企業なのかと思ってしまいました。
こんな緩い品質試験を許す風土の会社に技術力の向上を期待するのは無理だと思います。世界No.1を目指すなんて本気なのでしょうか。
それではレッツノート以外で小型軽量の頑丈なノートパソコンはないのでしょうか。
実はあります。例えば、dynabook RXシリーズです。
まず次の動画を見て下さい。
高さ76cmから4側面を鉄板の上に落下させ無事起動してます。
TOSHIBAが目指したのは国内当社比最高ではなく、世界最強でした。
Panasonicの「レッツノート」開発部門は今はなきTOSHIBAを見習って正々堂々と最新の規格で落下試験をクリアーして欲しいですね。
最後に
「でも、100kgfの加圧振動試験に耐えているので超凄いのでは?」と思われるかも知れません。
実は100kgf加圧振動試験は大したことではありません。(外装部品としてはです。内部の精密部品には接続ポイントに摩耗や位置ズレ・抜け、固有振動との共振等の影響があります。)
レッツノートのサイズは幅28.35cm×奥行20.38cm×高さ2.53cmです。
面積を計算すると5778cm^2なので、100kgfの等分布加重が天板にかかると1平方cm当たりの分布荷重はたったの173gfです。
これはマクドナルドのSサイズのコーヒー175gと同じくらいの重さです。
100kgf加圧の根拠ですが、2005年5月のPCWatchに掲載された開発者インタビューの記事によると、日本で一番満員電車になるのは、東急の田園都市線だということで、大阪の開発者がセンサーを付けたパソコンを鞄に入れ、人体にもセンサーを付けて測定したそうです。
その結果、ラッシュアワー時に最大100kgfかかっていることが分かったそうです。このデータを元に、重りを載せて13分間、1Gの圧力をかける試験器を作ったと解説されてました。
一方、SONYから別会社になったVAIOも同様の実験を行っているのですが、中央線の満員電車で測定したところ、150kgf以上だったので、150kgfで加圧振動試験を行っているとのことでした。しかも1時間。
更に驚いたのはVAIOはラッシュアワー時の急停車で本体がしなるほどのねじりが発生しても破損しないよう、3角を固定し1角を押し曲げる、独自のねじり試験まで行ってます。
こんなに虐められて、よく壊れないなー、とVAIOは最強のMだと感心しました。
この事よりPanasonicの大阪の開発者は東京のラッシュアワーをなめていたことが分かります。
なお2005年の混雑率を調べると、東京メトロの東西線が一番満員電車でした。Panasonicは東西線で実験すべきでしたね。
ちなみに、他メーカーの振動なしの全面加圧試験を行っていて、TOSHIBAが100kgf or 200kgf、NECが150kgf、富士通が200kgf、HPは600kgfでした。
気になったこと
レッツノートの開発者インダビューを読んだのですが、自画自賛だらけの内容をPanasonic経営層はよくWeb公開したなーと思いました。
気になったのはvol.2で「レッツノートの基準を満たす頑丈性能を確保し量産できる設計に行きつくまでに、およそ100台以上は壊しました」という説明です。
数多くの試験を行っているので、凄いんだと言いたいのかも知れませんが、開発者インタビューの中で、落下のシミュレーションについての説明はありませんでした。
製品開発は出来るだけ開発費を抑え短期間で製品化しないと負ける時代です。
その為開発試作段階では、解析シミュレーションを徹底的に行い、試作は最小限に抑えるのが当たり前です。
Panasonicは製品開発力が低くいのでトライ&エラーの繰り返しで99台以上無駄な試作を行いました、と公言しているように聞こえました。
今時こんな製品開発を行っている企業は少ないと思いますが、Panasonicは「レッツノート」でぼろ儲けしているので開発費を水のように使えるのかなー、と羨ましく感じました。
レッツノートの外装は耐久性が無い塗装なのですが、約45万円のノートPCって、一体誰が買っているのでしょうかね。
出典元:https://ec-plus.panasonic.jp/biz/pc/sp/20th_model_2nd/
また開発者インダビューのvol.2では「283.5mm×203.8mmのSZで0.45mm厚をやりたいとなれば、それはリスク覚悟でチャレンジしていくことを意味します」と物凄いことをやっているかのように説明してます。
ところがvol.5では「ただ薄くするのがいいことではない。「意味のある厚み」が実現する充実のインターフェース」と本体の厚みを薄くできなかったことを言い訳してます。
最後のvol.6では「開発者の妥協を知らない熱い思いが「ビジネスでの最高傑作」を生んだ」と歯の浮くような決め台詞です。
またPCウォッチの開発者インタビューでは、液晶ガラスの厚みを0.3mmから約0.2mmにして軽量化にチャレンジしたと説明してます。
TOSHIBAの名誉のために言っておきますが、マグネシウム合金0.45mmの成形と液晶ガラスの厚み0.2mmは2007年にdynabook RX1で世界初で実現してます。
PanasonicはTOSHIBAに10年遅れていて、10年かけてやっとマネできたのです。
「レッツノート」の開発者は本体の厚みや頑丈さを妥協してますが、利益を考えると甘いですね。
ユーザメリットもありますが、小型化と強度アップは包材や物流費用のコストダウンへの貢献が大きいからです。
頑丈であれば包材も簡易で小さくできます。包材が小さくなると製品をコンテナに収納できる数が増えます。コンテナの数を少なくできると輸送費も少なくできます。
コストダウンは即純利益なので、小型化に妥協したメーカは儲けをドブに捨てているようなものなのです。
上から目線の厳しいコメントとなりましたが、過去食洗器の故障でPanasonicに痛い目にあっているからではありません。
「レッツノート」は実験室で落とすと壊れるからです。
なぜなら、実験室はオフィスと違い、精密な測定を行うため、振動の影響が少なくなるよう床はコンクリート製です。環境試験室の床は防火や静電対策の為、スチール製となってます。
なので、柔らかい床で、しかもゆるい落下テストでOKとなったレッツノートは、実験室の硬い床に落とすと壊れるのです。
台車の上に載せて使っていたレッツノートが落下で壊れる事故が少なからず発生したので、エンジニアはレッツノートを床に置いて使ってました。
すると、床に座って作業している姿を産業医の先生が見て、これは腰に負担がかかるので、止めるようにと、指摘を受けることになりました。
また、更に追い打ちをかける問題が発生しました。
それはバッテリーパックの発火発煙のリコールです。
実験は付きっ切りで行うものではなく、終夜にわたるものもあります。ノートPCから発火し火災にでもなったら、相当の損害になるので、こんなノートPCは怖くて使えません。
バッテリーパックを交換する迄は仕事で使えないし、バッテリーパック交換後は安全上80%しか充電できないという、お粗末な対応でした。
これ以降、エンジニアがレッツノートを新規導入することは無くなったのは言うまでもありません。
まとめ
ブログでこんなに厳しいことを言うのは余計なお世話かも知れませんが、このままだとレッツノートには厳しい未来しか待ってないと思ったので、書かせて頂きました。
また、Panasonicの製品全部を否定するつもりはありませんが、甘い品質試験での製品開発をこれからも続けて行くなら、Panasonic製品の魅力は絵に描いた餅になってしまうのではないでしょうか。
管理人はPanasonicの製品すべてを嫌いな訳ではなく、良い物は今も使ってます。
例えば、フルデジタルアンプ SA-XR50は安いのにいい音で駆動するので、ピュアオーディオ用で楽しんでます。
一方、Panasonicの高級オーディオブランド、Technics(テクニクス)は2015年に日本で復活しましたが、セットで500万もするので、一般のサラリーマンには手が出せません。
こちらもどのような未来が待っているのか心配ですね。
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— heavy-peat (@AfterWork_Lab) August 7, 2021
レッツノートの頑丈度合いを解説した記事をリライトしました。
Panasonic関係者、レッツノート愛用者は読まないで下さい。#レッツノート #Panasonic
それでは今回の記事はこれでおしまい。